『完全改訂版 バイリンガル教育の方法』の感想

書籍

こんにちは、いずみです!

『完全改訂版 バイリンガル教育の方法』(中島和子著)という本を読了しました。
バイリンガル教育について調べると、多くの方がいきあたる本だと思います。

感想はというと、本当に読んでよかったです。
バイリンガル教育をする人にとって、多くの気付きを得られる本だと思います。

内容について

著者はカナダの大学で教授としてバイリンガル教育の研究をされている研究者で、さらにご自身もバイリンガル子育てを経験されています。 

どの章もためになる情報満載ですが、第2章第4章第8章第10章は、バイリンガル教育をする上で特に参考になる情報が多い章ではないかと思います。

第2章「子どもの母語の発達と年齢」
第4章「家庭で育てるバイリンガル」
第8章「海外児童生徒とバイリンガル教育」
第10章「バイリンガルと文化の習得」

興味深かった点を少し挙げてみます。

第2章
バイリンガルを育てる上での母語の役割、母語の発達と年齢との関係について書かれています。
バイリンガルになるための決め手となるものは何か?
・「母語」の定義とその役割母語の発達要因
バイリンガルの基礎となる母語を育てる上で大切な、言語形成期の各時代の留意点とその理由
バイリンガルと年齢との関係
バイリンガルを育てる上で、ある年齢を過ぎると2言語習得が難しくなるという「臨界期説」について
・新しいことばを覚えることと維持することについて
母語から「継承語」への移行(継承語の特徴、母語と継承語の比較)

第4章
バイリンガルを育てる上で家庭が担う役割について書かれています。
・バイリンガルの基礎作りで大事なこと
・母語をしっかり育てないとどうなるか
・「一人一言語の原則」について
・子供が2言語環境の犠牲になってしまうケースについて(ダブル・リミテッド現象)
・バイリンガルを育てる上で望ましい親の在り方

第8章
親の海外赴任・移住に伴って海外で育つ子供がどのような教育を受けるかについて書かれています。
・全日制日本人学校(の問題点)
・現地校+補習校の組み合わせで育つバイリンガルについて 
・補習校生徒の2言語の発達について
・現地語を正確に話すようになるのにどのくらいの時間がかかるのか?
・移住3~4年目になっても言語力が低迷している子に共通する言語環境
・現地語の読解力がつくのにかかる時間
・何歳頃に海外に移住すると母語のコントロールを特に失いやすい

第10章
バイリンガルになることとパーソナリティの関係、「自」「他」のグループ意識、アイデンティティとの関係について書かれています。
・バイリンガルに育てると「二重人格になる?」「アイデンティティが混乱するのでは?」などの疑問について
・二重言語者は文化や言語をどのように見るのか
・子供の異文化受容と年齢の関係
・言語の習得と同族意識
・2言語の習得とアイデンティティ

その他、イマ―ジョン方式のバイリンガル教育や、小学校英語教育などについても詳しく書かれています。

読んでよかった理由

この本を読んで特によかったことは以下の点です。

  1. 研究結果・データに基づいているので信頼性が高い 
  2. 示唆に富む内容
  3. どのバイリンガル教育のタイプであっても参考になる

①研究結果・データに基づいているので信頼性が高い 
著者はバイリンガル教育を専門とする研究者であり、信頼性が高い内容となっています。また、本書では数百人の児童を対象にした実験や数年に渡る調査など、さまざまな研究・実験結果が紹介されており、個人のバイリンガル教育の経験からだけでは知りえない貴重な情報を得ることができます。

②示唆に富む内容
この本からは、各家庭の状況や子供に合ったバイリンガル教育を考えるための、多くのヒントが得られます。
特に、自分と子供がまだ経験してないことについても知ることができ、予測を立てることができるのは助かります。

また、「子供が〇歳で海外生活が始まる場合、その年齢で海外に移住する子供にはどういう特徴や想定される問題があるか」というふうに、2言語環境に置かれる子供が抱えやすい問題や傾向についても書かれているので、どう子供のケアやサポートするか考える上で参考になります。

③どのバイリンガル教育のタイプであっても参考になる
バイリンガル教育はさまざまなタイプが考えられます。
・日本人両親の子供が、日本で外国語(たとえば英語)を習得する場合
・日本人両親の子供が、外国で(生まれ)育つ場合
・日本人両親の子供が、成長途中で外国へ移住する場合
・日本人両親の子供が、成長途中で外国から日本に帰国する場合
・国際結婚の場合(日本在住/海外在住)
・日系人が継承語として日本語を習う場合

上記のタイプの中でも、移住時の子供の年齢や、子供が通う学校(現地校のみ、現地校+補習校、etc.)によっても状況はさらに異なってきますが、さまざまな環境や年齢でバイリンガル児になる子供が調査・考察されているので、どのタイプであっても参考になることがたくさんあると思います。

最後に

この本を読んで、バイリンガル教育について多くのことを知ることができました。

知識があれば、バイリンガル教育を行う上で子供の各時代に必要な方針を定め、有意義に時間を使うことができます。わからないことだらけのバイリンガル教育、予備知識があるとかなり助かります。

特に「この年齢の子供にはこういう特徴がある」「どの年齢で何をする(しない)のがよい」といった情報は、親として子供をどうサポートすべきかという点でも参考になります。

私はバイリンガル教育4年目(子供は8歳半)でこの本を読みましたが、勉強になることは多く、今後どうすべきか考える上でヒントになることがたくさんありました。繰り返し読もうと思います。

現在バイリンガル教育をされている方やこれからする予定の方に、本当におすすめの1冊です。

それでは、また!

¥2,970 (2024/08/08 07:44時点 | Amazon調べ)


タイトルとURLをコピーしました